海で・・ 698
「そ、それは…想像に任せるさ…」
翔は視線を逸らせ窓の方を見やった。
…ああ、お前も経験あるんだな。
「男って大変だねぇ」
「女の子同様デリケートだってわかってください」
しみじみ言う茜にそう言い返す。
「へぇ?デリケートって?…」
キョトン顔の茜…
そう君は、口ではいろいろ知ったようなことを言ってはいるけど、セックスの奥深さをまだ知らないんだもんな…
なんて、上から目線で見ちゃうよね。
「男は女以上に心も身体もデリケートなんだよ…」
横から翔が、茜の顔を見ながら呟くように言った。
「へぇ、千葉の口からそんな言葉が出るとは思わなかったなぁ」
隣からノコノコやってきた初音が言う。
「いや、僕だって男だからな…」
「さすが優等生は違うねぇ」
おい茜さんや、それってどういう意味だい。
その話についていけない彰人と、さらに後ろでは工藤さんと優ちゃんが首をかしげていた。
それゃあ翔が百戦錬磨な男だなんて、初音や茜じゃなくたって誰も思いもしないよな;…
僕だって初めは、翔がそんなに経験しているとは信じられなかったもんね…
まあそれでありながら、工藤さんにはなかなか手を出せなかったってとこが翔らしいというか…僕と似ているというか;…
なんか翔のそういうところに親近感を抱いちゃったりするんだよね…
…そんなこともありながら時間は過ぎていき、放課後。
翔は足早に教室を出て行った。何か用事でもあるのか。
工藤さんは一緒じゃないから部活だな。
僕も今日は特に予定はないし、帰るか…
そう思って教室を出る。
「一馬ぁ〜」
…なんか呑気な感じで僕を呼ぶ声。
「なんだよ唯…」
「一馬と一緒に帰りたいなぁ、って気分だったから〜」