海で・・ 695
まあそれを考えると、今回起きた事件の水泳部の男子だって、このままだと辞めていく奴がでないとは限らないもんな…
ここに保管される制服が増える前に、藤堂先生には一刻も早く水泳部に戻って来てもらって、事を丸く修めて欲しいよな。
「僕は友達にも先輩にも恵まれて、ホント感謝しているんです。」
「ふふ、私もその中に入っていたりするのかな?」
「もちろんですよ」
僕がそう言うと瑠璃子さんも笑ってくれた。
以前から抱いていた印象だが、瑠璃子さんはどうも陰鬱さを帯びている気がした…それが藤堂先生との関係からくるものかどうかはわからないけど。
こんな可愛い笑顔をするのなら、いつも明るい瑠璃子さんを見ていたい…そう思った。
部室を出ると、講堂に演劇部の様子見に行くと言う瑠璃子さんと別れる。
もちろん一緒に行かない?と、誘われはしたけれど、また入部を誘われでもしたら困るので、僕はチュッとキスをして曖昧にごまかした。
瑠璃子さんは僕の気持ちを察したのか、僕の背に腕を回し、それ以上は何も言わなかった…
部室を出る。
カバンを取りに行ってそのまま帰ろうと思ったが、ひとつ、すっかり忘れていたことを思い出した。
工藤さんと翔はあの後どうなったんだ?
練習が終わった後、僕は成美に強引にシャワールームに連れ込まれたから全然わからなかった。
まあ、僕が気にすることじゃないといえばそれまでだけど…
少しだけ気にしながら、僕は教室に向かった。
誰もいないと思っていた教室に電気が点いていた。
部活帰りの連中かな?…と思いつつ扉を開ける…
「うぁ!…一馬ぁぁ!…」
素っ頓狂な声を上げたのは翔だった…
「あれ?…まだいたんだ;…」
翔の背中に隠れる工藤さんを見て、僕はなんだか気まずかった;…