海で・・ 692
「そんなことないです、むしろ歓迎しますよ」
僕は自身を持ってはっきりと言うと、瑠璃子さんも笑顔を作ってくれた。
「ありがと、ホントに一馬くんは優しいね…」
「いえ、当然のことを…」
「そういう人が、やっぱり女の子にモテるってことだよね」
「そんな…」
「ううん…本当だよ。もっと前に一馬くんに出会いたかったって、本当に思っているのよ…」
「何言っているんですか…瑠璃子さんには今、涼がいるじゃないですか…」
「そ、そうよね…」
「それゃあさっきは、涼のあんな情けない姿見ちゃいましたけど、男なんて皆同じようなもんですから、多めに見てやって下さいよぉ…」
「ふふ、やっぱり一馬くんは優しいよね…」
笑顔を見せる瑠璃子さん、やっぱりこの人にはこういう表情が一番似合う。
「藤堂先生には…」
「うん…私で良ければ一緒に、よろしくね」
「もちろん、瑠璃子さんがいると心強いです」
…身体を洗い終え、シャワー室から出た。
「うちの部室に行こう、替えの制服はあるから」
塗れた制服は気持ち悪いけど、自業自得ってやつだよな;
相変わらず涼の出す女の子のような声が聞こえてきてはいたけど、僕と留璃子さんはニヤケ合ってその場から走り去った。
「今日、演劇部は練習は?」
はあはあと息を吐きながら、衣装室の前まで来た。
「講堂でやっていると思うけど、涼くんがいないんじゃ、捗ってはいないと思うよ‥」
涼は演劇部唯一の男だもんね。
その涼があんなことしていると知ったら、演劇部の皆はさぞかし驚くだろうな…
「みんなは、もう帰ったかな?」
瑠璃子さんが中をのぞく。
…この格好だから、確かにばれると不味い。
しかも瑠璃子さんと2人、何をしてたか、真帆や茜に気づかれたら…
「いいよ、入って」
瑠璃子さんがこちらを向いて手招きする。
衣装室。
あれだけ様々な衣装があったのだから、ウチの制服なんて当然のようにあるのだろう。