海で・・ 690
瑠璃子さんの小さな身体を抱く。
こんな身体なのに、僕よりも苦労してきたんだと思うと気の毒にも思える。
「ありがと…」
小さな声で、瑠璃子さんが僕に言うのがわかった。
僕は瑠璃子さんの綺麗な黒髪を優しく撫でた。
「身体洗いましょうか、隣に移りますね」
それはそうだよね…
いくら留璃子さんが寛大だからといって、カレシになったばかりの涼のこんな恥ずかしい姿、見ていられないは当然だよな;…
「じゃぁ隣行くなぁ」
僕は成美に小さく声を掛けた。
成美は返事はせずに、新しい玩具を手に入れた子供みたいな満面の笑みで答えた。
…もしかしたら、もう成美から声は掛からないかもしれないな…
そう思うと、涼に成美を取られたみたいで、ちょっと寂しかった。
隣の部屋に移り、服を脱いだ瑠璃子さんと一緒にシャワーを浴びる。
「なんか無理矢理みたいですいませんでした」
「ううん、そんなことないよ」
瑠璃子さんは笑顔で言う。
「こんな経験、たぶんもうすることないだろうからなぁって。涼くんには申し訳ないけどね」
「あいつは罰が当たったんですよ、きっと」
「一馬くんもあるの?…こんなことしたこと…」
瑠璃子さんはボディーソープのたっぷり着いた手で、僕の尻を撫でた…
「あ、無くはないですけど、あんましいい思い出は無いですね;…」
「それは残念ね…男の人には前立腺があるから、女よりいいっていうのに…」
「そうなんですか?…」
「ええ、男の人が癖になるのも、前立腺のせいかもしれないはね…」
「はあ…」
言われても、そういうことはよくわからないし、あまり思い出したいとも思わないのでなんとも…
「あ、今日はいい思い出になったよ。ありがとう」
「あ、はい…」
瑠璃子さんは微笑んでそう言った。
「あの、瑠璃子さんは…」
「うん?」
「その、涼と付き合うことにしたんですか?」