海で・・ 671
「あ、藤堂先生の家、翔も一緒に行ってくれることになって…」
プールに入る入口で、靴下を脱ぎながら僕は言った。
「それは藤堂先生も喜ぶと思うはぁ。なんたって千葉君はこの学校首席で入ったんですものぉ、強い味方が出来たってことよね。」
うわぁ;翔が秀才とは聞いていたけど…まさか首席で入っていたとは;
翔の方を向くと、恥ずかしいのか視線を逸らしてしまった。
別に聞かれたくないことじゃないだろう…僕にしてみたらむしろ羨ましいくらいだ。
…まあ、優等生には優等生の悩みがあるのだろうけど。
「藤堂先生とは…」
「最近は連絡もしてなくて…実家に帰られたのかなぁ…」
「実家は何所なんです?」
そう言った話しは聞いたことが無かった。
「それが名古屋なのよ…気安く行ける距離じゃないはね…」
ミキさんは残念そうに腕を組んだ。
「大丈夫ですよ名古屋なら。のぞみだったら東京から1時間40分…日帰りだってできますよ。」
翔くん…君って鉄道オタクだったりするのかよ;?‥
「そうなの?それならお休みの日にでも一日使えば行けるわねぇ…」
ミキさんは腕を組み思案顔。
「2人は大丈夫?」
「僕個人だけなら問題はありませんけど、親はなんて言うか…」
翔は困った風に言う。僕も少し考える。
翔は普通に親からの許しがもらえるか悩んでいるのだろう。
ただ、僕の場合はあかりさんへの言い訳をどうしようかと…
あの人のことだから反対することは無いだろうけど、ミキさんが一緒となると妙に勘繰りそうだもんな;…
「無理そうだったら、私一人で行って来てもいいはよ…」
ぅえ?!それはマズいよ;…
だって藤堂先生は、明らかにまだミキさんに気があるからね;…