海で・・ 68
「でも、吸いすぎはやめてくださいね」
一馬は美貴の体を心配していった。
美貴はそんな一馬にこういった。
「わかったわ。吸うのをやめるわね。最近始めたばかりだからやめることも簡単だと思うから」
美貴は一馬にそう言い返した。
美貴は吸っていたタバコを吸うのをやめてそのまま灰皿に押し付けて持っていたタバコを全部捨てライターも捨てた。
「そんなことやらなくてもいいですよ・・・」
一馬は美貴に向かってそう言った。
美貴の返答はこうだった。
「せっかく愛しい彼が心配してくれたんだから、やめたいと思ったのよ」
そして美貴は話そうとしていたことを話し始めた。
「K高で教育実習してるんだけど、ね…」
美貴は言葉を選ぶように話す。
「レイプされたの、私…」
「えっ…」
美貴の口から発せられた単語に、一馬は言葉を失った。
「授業後、教室で、何人もの男のモノで、犯されたの…」
心なしか、美貴の声が震える。
「嫌だったの。一馬くん以外の人のを受け入れたくなんかなかった」
「ミキさん…」
一馬は言葉が出ない。
「嫌がってはいても、だんだん身体が求めるようになっちゃって…一馬くんに申し訳なくなっちゃってきて…」
美貴の瞳から、一筋の涙が流れる。
「一馬くんとするのに、不満なんて無いのに、身体はもっとすごいのを求めちゃって、私の身体、どうかしてるんじゃないかって思っちゃって…」
泣きじゃくりながら、言葉を吐き捨てる美貴。
「でも、私は一馬くんが一番好きなの!一馬くんとするのが一番気持ちいいの!私が愛する男の人は、一馬くんしかいないの…」
そう言うと、美貴はがっくりと項垂れ、大声で泣き崩れた。
それを見た一馬は…
「ミキさん、もう泣かないでください」
美貴の肩を抱き、耳元で話しかける。
「ミキさんは僕と知り合う以前にも、他の男の人としていたんでしょう?」
「そ、そうだけど、それとは…」
「確かに、無理矢理されたのには許せない思いはあります。でも、それだけで、ミキさんのことを嫌いになることなんてできません」
一馬は話を続ける。
「僕も、ミキさんのことを愛してます。ミキさんにふさわしい、ミキさんを満足させることが出来るように、もっと頑張りますから…」
「一馬くん…」
お互い、裸のまま抱き合う。
そのまま、二人は一晩中求めるように交わり続けた。
―翌日。
美貴の運転する車で、一馬は家に帰る。
両親には『友達の家で泊り込みの勉強会』と偽っていたので、疑われることは無かった。
「ふぅ…」
部屋のベッドに座り、一息つく。
昨夜の美貴との交わりを思い出す。
彼女と付き合ってから、あんなにしたのは初めてかもしれなかった。
次に思い浮かんだのは秀人の顔だった。
「あいつは…今頃、シカゴで修行中かな…」
単身で海を渡った親友。
アヤさんのご両親に認められるよう、頑張っているのだろう。
「さて」
一馬は机に向かう。
「ミキさんと、真帆のためにも、僕も頑張らなきゃな…」