海で・・ 666
相楽先輩はため息をついて、悩ましげな表情をする。
「私は成美に部を引っ張っていってもらいたいから…」
「次の部長なんですね」
「ええ…あの子は本当は、すごくいい子って、わかってるから。でも、水泳部とのしこりも残したくない…悩ましいのよ」
「僕から話してみますよ…何なら藤堂先生を呼び出して、三人で会ってもいい…」
「藤堂先生の居所は分かるの?…」
「多分ミキ(やばっ;)…中原先生なら分かる筈ですから…」
「確か中原先生は藤堂先生の学校の後輩だったのよね?…」
「はい、共通の友達も多いみたいだから、きっと探し出してくれると思います。
「ごめんね、一馬くんにも力を貸してもらって」
「いえ、僕も関係者といえば関係者なので、何かあったらなんでも協力しますよ」
「ありがと。やっぱり聞いてたとおり、優しい子なのね」
相楽先輩はニコリと微笑んだ。
笑顔がよく似合う人だ。
「部長…」
後ろでか細い声が上がる。
その声の主は、工藤さんだった。
「やだぁどうしたの?…部活休んだって聞いて、一馬くんと心配していたところなのよ…」
「ご、ごめんなさい…一応、連絡は入れておいたんですけど…」
「あ、別に休んだことを攻めている訳じゃないの…ただ、あんなことがあった後だから、気になって…」
相楽先輩は工藤さんの頭をポンポンと優しく叩く。
「ごめんなさい、あのときの…怖くて、今も時々思い出しちゃって…」
工藤さんは俯きながら小さく言う。
仕方ないことだ。誰だってあんな経験したらそうなってしまうはずだ。
千葉は工藤さんとは『まだ』なんだよな。
あいつが勇気を出して、2人が結ばれるのを、僕は心から願うだけだ。