海で・・ 663
「それは僕だって一緒だよ。今まで相手したみんな、平等に愛しているから」
「やっぱり、似てるんだな」
「まあな」
千葉と顔を合わせ、笑いあった。
彼とは靴箱を出たところで別れ、一人で帰り道を歩く。
「一馬くん…」
声をかけられ、振り向く。
シンクロ部の部長、相楽愛美先輩だった。
「あ相楽先輩、こんな時間に部活はいいんですか?…」
長身の相楽先輩は、僕と目線の高さが一緒だった。
「あら、私もう3年だよ。そろそろ勉強もしなくちゃいけないって訳よ…」
「そうなんですか…塾か何かで?…」
「そう、その前に工藤さんの様子を見に行こうと思って…あの子今日、部活休んでいるみたいなのよ…」
ああ…工藤さんはまだ引きずっているのかな…
シンクロ部は普通に部活やっているのか、成美や千葉先輩は参加しているんだろう。
「学校には来ているので、大丈夫だとは思うんですけど」
「そう…あんなことがあると、プールに行くと思い出しちゃうのかな…」
「先輩は大丈夫でした?」
「ええ…だけど部長としては責任を感じるは…」
「何も相楽先輩がそんな風に思わなくても、いいんじゃないですか?」
「そうもいかないは…水泳部の男子をあそこまで追い込んだのには、私の責任もあるのよ…」
「プールの使用で揉めていたんですよね?」
「それもあるけど…やっぱり藤堂先生が辞めさせられたことが大きいんじゃないかしら…」
藤堂先生…あの人はどうしてここを去ることになってしまったのだろう。
ミキさんは休職だと言っていたが、本当に戻ってくることはあるのか?
「水泳部の男子は、みんな藤堂先生を慕っていた…それを私が…」
「いや、それは先輩のせいでは…」
「いえ…藤堂先生に乱暴された子がいると、シンクロ部の中で話になって…」