海で・・ 658
「いや、そんなことは無いけど…」
奴は口篭りながら俯いた。
「まあ別に攻めるつもりは無いんだ…僕だって似たようなもんだからさ…」
「はは、似たようなモンって、鈴木のも被ってんだな。」
おい;…そっちじゃ無いだろぉ;
まあ…冗談の通じるヤツで良かったと、心の中ではホッと胸を撫で下ろす。
用を足し終え、洗面所でも並んで手を洗う。
「話って、それだけじゃないんだろう」
「ああ…まあな」
僕が信用できる人間だと思ってくれたか、彼の方から話し始めた。
「姉さんから聞いたんだ…陽菜に何が起こったかをね…」
「やっぱり知っていたんだな…」
僕はズボンの脇で手を拭きながら言った。
「ああ、鈴木には感謝しているんだ…あれからずっと、礼が言いたかったんだ…」
千葉翔はポケットからハンカチを取り出し、それを僕に差し出した。
「あ、いいよ…千葉って見た目通り、ちゃんとしてるんだな…」
「いや、これくらい当たり前だよ…」
照れくさそうに翔は笑う。
「工藤さんとは、いつからなんだ?」
何気なく突っ込んだ質問をぶつけてみる。
「陽菜とは中学の頃からだよ…僕が告白したんだ」
「へぇ…」
僕と真帆と一緒って訳か…
「それで…工藤さんとはもう?…」
付き合うってことはそうだと分かっていても、聞かずにはいられなかった…
「それってセックスしたかって聞いてるのかよ?…」
「ぅえ!…ああ、まあ…」
露骨にセックスという言葉が出てきたことに焦ってしまう…
「それじゃあ鈴木はどうなんだよ?…信藤さんとはヤッテんだろ?…」