海で・・ 655
「何かきっかけがあればいいんですけどね…」
「そうね…」
二宮先輩はため息をついて
「一馬くんの仲のいい女の子が、彼と付き合ったら、どうする?」
「それは…ちょっと、今は考えられないですね…」
涼や彰人なら話は違うが、話したことのない人となると…
それでも二宮先輩にここまで言われると、何とかしてあげたくもなる…
「千葉先輩とは随分仲良しなんですね…」
「う、うん…クラスメートだし…」
それだけ?…
クラスメートというそれだけで、その弟の素行まで気にするか?…
「もしかして二宮先輩…千葉翔と…何か特別な関係があるんですか?…」
二宮先輩は一瞬ハッと驚いた表情をした。
「一馬くん…鋭いね、やっぱり、隠せないかな…」
「どういうことです?」
「栞にも内緒なんだ…私も、彼と関係する一人だから…」
…そういうことなのか
「千葉翔のこと、好きなんですね」
「好き…私は好き、だけど、彼にその感情があるかは…最近は冷たいし…」
「邪険にされるとかですか?…」
「ううん、そうじゃないの…2人で会っている時は私だけを見てくれるし…とても優しいは…」
なんだか自分のことを言われたみたいで、少しドキリとした…
「…二宮先輩はそれだけじゃ、満足出来ないんですか…?」
「そうだね…できれば他の子なんていいから、私だけを…ワガママかもしれないけど…」
二宮先輩は少し寂しそうに言う。
…千葉翔はこんな美人を誑かし…と強く言えることが僕にはできなかった。
彼と僕の境遇は似ているような気がしてならないのだ。