海で・・ 654
「それじゃ何だか悪いですね…」
僕は移動しようと、腰を少し浮かせた。
「大丈夫だよ一馬くんなら…。いてくれた方が落ち着くもの…」
遠くを見ながらそう言う先輩の言葉に、僕はなんだか安心して腰を下ろす。
「気持ちいいですよねここ…僕もこないだ初めて来て、すっかり気に入りました。」
「だよね。私もなの。お天気が良ければ、これから2人でお昼を食べましょうか」
「一人になりたいと…」
「一馬くんと一緒なら、そんな気にはならないよ」
ニコニコして言う二宮先輩。
弁当箱の蓋を開け、僕もお昼を食べることにした。
「そういえば一馬くんって…栞の弟と…同じクラスよね?…」
口ごもりながら、言いにくそうに二宮先輩は聞いてきた…
「ん?…栞って、千葉先輩のことですか?…」
「うん千葉栞の弟…、千葉翔くん…」
「はいそうですけど…アイツが何か?…」
「こう言うのはどうかと思うけど…彼、複数の女の子と一緒にいるとかって…栞も困っているみたいで」
「そうなんですか?」
彼は確かにイケメン、成績も優秀だしモテる要素もある。
千葉先輩、朝の言い方からはそんな素振り見せてなかったけど…
「仲がいい姉弟だけに、栞も心配なんだと思うのよね…」
仲がいいんだろうことは、何となく感じたけどな…
「そうなんですか…でも僕、クラスが一緒ってだけで、ほとんど口きいたことも無いんですよね…」
「そうなんだ…それじゃ仕方ないか…」
残念そうに、二宮先輩は肩を落とした。