海で・・ 652
「もちろんです。彼女とは仲もいいですから…」
「そうよね…一馬くんは優しいから、頼まなくて力になってくれるはね…」
「いえ、でもどう励ましていいか…分からないです;…」
「そうね…一馬くんは男の子だから、余計気を使っちゃうはよね…」
「はい…なんだか言葉を掛けるのですら、躊躇っちゃいます…」
「大丈夫。一馬くんの思ってること、そのままを出せばいいの。気を使うより、自然に接してくれた方が嬉しいんだよ」
「そうですか?」
「きっとそうだよ」
千葉先輩と別れ、自分の教室へ。
「一馬、おはよ!」
「ああ…おはよう」
手を振る初音の隣に、工藤さんがいた。
「ぁ;…工藤さん;…」
千葉先輩にはああ言われたけど、やっぱりそうもいかないよな;…
「ぁれぇ?どうしちゃったの?…何か2人の間にあったのかなぁ〜?」
初音さん…そんなんじゃないですから;…
「(おい一馬…お前、工藤ともヤッたのかよ?…)」
彰人…お前はいつの間に来たんだよ;…
「(違うから…そういうことじゃないんだよ…)」
本当のことは僕しか知らない、それがもどかしいこともある。
当の工藤さんも困ったような表情を見せながら僕を見る。
初音も彰人もそれを見て深く追及するのはやめたようだ。
やがてチャイムが鳴り、ミキさんが教室にやってきて授業が始まる。
工藤さんはその間も僕を気にする素振りを何度か見せていた。
千葉先輩に言われたように僕は、極力自然な態度を装いニッコリと作り笑顔を返す…
そんな中でなんだか視線を感じ、その先を見る…
ニヤッと頬を上げ、眼鏡に手を宛がう男子…
千葉先輩の弟…千葉翔だった…