海で・・ 650
「よかったねぇお姉ちゃん、幸せになれて!…」
「うん。初めは一馬くんに嫌われたらどうしようかと思っていたんだけど…」
あかりさん…そんなこと考えていたんですか…
「そうだよね…年頃の義理の息子…一馬くんじゃなかったら大変だったかもしれないね…」
いえいえ;…みゆきさんが知らないだけで、大変なことはもうしちゃいましたけどね;…
「うん…一馬くんは、優しくていい子だから…ホントに良かったと思うよ」
あかりさんの言葉に、ホッとする自分がいる。
僕は脱衣所に持ってきたスカートと下着を置いて、静かに立ち去った。
その夜はぐっすり眠れた。
今までは、何か心の中につかえるものがあったのかと思えるくらいに…
何時ものようにあかりさんが作ってくれた美味しい朝食を食べて、みゆきさんより一足先に家を出る。
みゆきさんは一緒に行こうと言ってくれたけど、みゆきさんの車で登校なんてしたら、皆に何を言われるか分かったもんじゃ無いからね。
絶対に面白可笑しく噂されて、みゆきさんとデキているだと、昼までには学校中に知れ渡りそうだしな;…
…みゆきさんと一緒、といえば、昨日の帰り、涼は植田先輩と一緒に帰ってたなぁ、何かしら進展があったのだろうか。
2人きりになることがあったら聞いてみようかな。
いつものように靴箱ではき替え、教室を目指す…
「おはよ!」
「ああ、おはようございます…?」
「どしたの鈴木くん、朝からなんか嬉しそうじゃん♪」
誰だろう、と思って顔を見て、すぐに思い出した。
シンクロ部の千葉栞先輩だ。
部活のときとはまったく印象が違う。長い黒髪が綺麗な人だ。
「何かいいことでもあったのかな?…」
千葉先輩は、髪を掻き上げながら僕の顔を覗き込む。
「別に何もありませんよ;…僕、そんな変な顔してましたかぁ?…」
「クスッ、一人ニヤケた顔してたよぉ。さてはエッチなことでも考えていたなぁ〜?」
「せ、先輩!…からかわないで下さいよぉ;〜」