海で・・ 646
「うんそうね…それはちゃんと籍を入れてからかな…?」
そうか…父さんとあかりさんは、まだちゃんとした夫婦じゃないんだもんね…
「子供も出来たんだから、籍ぐらい早く入れてもらったら?…」
みゆきさんは不服そうに言い、僕の顔をちらっと見た。
「あ、僕もそうしてくれたら…嬉しいですけど…」
本当は僕にとっては、籍を入れるとか入れないとか…どうでもいいように思えた…
「そう?一馬くんがそう言うなら、早めに話をしようかなぁ…」
少し戸惑った風のあかりさんだが、その顔は嬉しそうだった。
母さんがいない今、僕にとっての母親はあかりさんと言っても同然なのだから。
血が繋がっていなくても、僕の精神的な支えになってくれる…そんな人はこの人以外にはいない。
それはミキさんや真帆とはまた違う、親近感を抱いてしまうんだ…
「僕から父さんに言っておきますよ…僕はそうして欲しいって…」
「一馬くん…」
あかりさんは僕のその言葉が相当嬉しかったのか、瞳に涙を一杯に溜めていた…
あかりさんのそんな表情を見るのは初めてだった。
「あかりさん…」
それを見ると僕だってなんか来るものを感じる。
「嬉しいんだよ、お姉ちゃんも」
隣のみゆきさんが言う。
「私たちも、小さい頃にお母さんを亡くしてるから…」
「そうだったんですね…」
…考えてみると、あかりさんのご両親のことは、余り聞いたことが無かった。
「だから私にとっては、お姉ちゃんが母親代わりでもあった訳よ。」
仲がいい訳だよね…
「それじゃあ、2人のお父さんは?…」