海で・・ 633
「じゃあ、行きましょうか」
「そうね、お姉ちゃんも待ってるだろうし」
下校する他の生徒の目も気になるし、さっさとみゆきさんの車に乗り込み家を目指すことにした。
「あかりさんに会うの、久しぶりですか?」
「うーん…そうかもね」
「もっとちょくちょく遊びに来てくださいよ。あかりさんも喜びますから…」
「そう?一馬くんは迷惑じゃない?」
サングラスを掛けながら、ゆかりさんは車をゆっくりと発進させる。
「迷惑なんてとんでも無いですよ。父さんにも会わせたいですし…」
遠くに涼と植田先輩が2人で帰っている姿が見え、僕は見えないようにシートに身を沈めた。
車はすぐに動き出す。
歩道を並んで歩く涼と植田先輩…なんだ、仲よさそうだな。
さっき僕に言ったことを聞いて、踏み出したのかな?
だとしたら、ちょっと嬉しい。
みゆきさんは交差点で止まったところでサングラスを外す。
「お姉ちゃんに好きな人が出来たって聞いたときは、ちょっとビックリしたんだ」
「どうしてです?」
「昔は、男の人が苦手で、内気だったから」
それは今のあかりさんからは想像できませんけど;…
「父さんが口説いたんですかね?…」
「うん…そうだとしても、奥さんのいる人と…って、思っちゃった訳よ…」
そうだよな…父さんとあかりさんが始まった時は、まだ母さんがいたんだもんな…
「僕はあかりさんに来て貰って、本当に嬉しいですよ…」
「そう?そう言ってもらえると、お姉ちゃんも、私も嬉しいよ」
みゆきさんは隣で微笑んだ。
…そういえば、あかりさんって父さんが初めての男性だって言ってたな。
そう考えると内気で男性が苦手だって言うのも頷けるかも。
みゆきさんと他愛もない話を続けていると、いつの間にか家に着いていた。