海で・・ 622
「もしかして今回も大賀先輩が参加するとか?」
「ううん、こないだみたいなことがあるといけないから、アイツにはもう頼まないよぉ。」
まあ確かに、あの時は大賀先輩の暴走で、滅茶苦茶になっちゃったもんね;
「それに今回はちゃんとした男子部員もいるしね…」
それって…涼のことだよね。
涼が植田先輩と茜の脚本を演じるって訳か…
気の毒過ぎて、なんだか他人事とは思えないよぉ;
体育館裏に、少し新し目のプレハブ小屋が建っている。
「ここが演劇部の活動場所」
「よく来るんですか?」
「瑠璃が部長になってからね。それに、仲のいい子が多いから」
「男の部員は?」
「一馬と同じクラスの子以外に聞いたことはないなぁ。だから修にも助っ人要請がくるわけでさ」
女子高だった時は女子が男役をやっていたんだろうけど、共学になった今ではそうもいかないんだろう…
「男子部員の募集はしていないんですかね?」
「演劇部としては、いつでもウェルカムなんだろけど、高校時代から演劇に目覚める男子って少ないみたい、」
「そうなんですか?…」
「今活躍している俳優さんたちも、だいたいが大学生になってからって人が多いみたいよ。」
「そうですか…」
涼も一人で大変なんだな、と思ってしまう。
成美が扉を開け、中に入る。
僕もその後に続く。
中は思ったよりも綺麗な感じ。
モノで溢れてごった返す、ってイメージしてたからちょっと意外かも。
「あ、成美、来てくれたんだぁ」
こちらに気づいてやってきた2人の先輩。植田先輩ではなかった。
「あ、一馬に紹介するね。橋本小春と二宮環。1年のときから同じクラスで、2人とも演劇部の女優さんね」
2人とも、“女優さん”という言葉の響きに似合った、綺麗な人だ。
僕はなんだか照れてしまう…
「はじめまして…1年の鈴木一馬です…」
「こんにちはぁ。成美の連れて来る男の子だから、大賀くんみたいなマッチョだとばかり思っていたはぁ。」