海で・・ 618
「まああの人は特別ですから、意識する必要なんて無いですよ…」
アヤさんは、ちょっと日本人とは思えない、自由過ぎる感性を持っているもんね。
「うんそれは分かっているのよ…彩さんは大金持ちのお嬢様、私なんかが逆立ちしたって敵う人じゃないもの…」
そうだ。そうなんだ。
僕だって去年のあの夏、秀人とともにミキさんアヤさんをナンパできたのは奇跡だと思っている。
明らかに軽くあしらわれると思ったら、向こうも乗ってきた…というか、まさにアヤさんの自由奔放っぷりに助けられたのかもしれない…
(あの赤ん坊はそのときに出来たというのがまたなんとも)
「由佳里さんは、焦らないでください。きっと、いつか、いい人は出来ます」
「うん…ありがとう。一馬くんは優しいね」
僕は本心から由佳里さんの幸せを願う…
後何年かしても、本当に由佳里さんにいい人が出来なかったりしたなら、僕が由佳里さんを幸せにしたい…そこまで思ってしまった…
「大好きですよ由佳里さんのこと…これから何があっても、この先何年経っても、僕の気持ちはずっと変わりませんから…」
「ふふっ、ありがと…一馬くんのそういうとこ、私、大好きだよ…」
最高の笑顔を見せてくれる由佳里さん。
その瞳に、キラキラ光るものが見えた。
車は再び動き出し、あっという間に僕の家に着いた。
「ありがとうございました」
「そういえば、お母さんが亡くなって…大丈夫?」
「ええ、もう大丈夫です」
「何か女手の必要な事があったらいつでも言って…一馬くんの為になら夜中だって跳んで来ちゃうからぁ!」
「ありがとうございます。でもほんと大丈夫なんです。実は父さんの親しい人が…来てくれていて…」
「まあ!…そうよね…、一馬くんのお父さんって、まだ若くてカッコイイからねぇ〜」