海で・・ 616
「あ、それで赤ちゃんは?…」
僕は思い出したように言った…
「それがまだ硝子越しにしか見れないだよ…俺もまだ抱けてないんだぜ…」
秀人がなんだか不満そうに言う。
「それは後ちょっとの我慢だよ…予定日よりもだいぶ早く出て来ちゃたからね…」
アヤさんがなんだか申し訳なさそうに言った…
ありゃ、そうだったのか。
生まれた直後だったから仕方ないとは思っていたけど。
「まあ、アヤさんも赤ちゃんも健康なのでホッとしました」
「それが一番よね」
唯さんもニコリと微笑んだ。
そろそろ家に帰ろうかと思ったとき
「一馬くん、家まで送ってあげようか?」
そう言ったのは由佳里さんだった。
「そうして貰え一馬!…姉貴の運転は心配だけどな!」
「またぁそんなこと言って…」
そんな訳で僕と由佳里さんは保育器に入った秀人の赤ちゃんを見せて貰い、由佳里さんに送ってもらう…
「可愛いかったね…」
ハンドルを握りながら、由佳里さんは微笑んだ。
「は、はい…」
僕には子猿にしか見れなかったけど、一応由佳里さんに合わせる。
「私もいつかあんな風にお母さんになるのかなぁ…」
「そう、だと思いますよ」
「だよね……あ、でも、その前に彼氏だよね」
えへへと笑いながら由佳里さんははにかんだ。
どんな顔をしていればいいか、正直わからなかった。
由佳里さんは一番最初に、僕が女性として意識した存在…
まだ毛も生え揃わない、中1の頃…
ゲームをやっていた秀人の部屋からトイレに立った僕は、たまたま風呂上がりの由佳里さんに遭遇してしまった…
あの時…
僕はバスタオルに巻かれたの谷間を見て、腰に電流が走った…
それが僕の初めての…精通だった…