海で・・ 610
「ああ、この位なんでも無いさ…」
本当は握り絞められたあそこが今でも痛かった…
「無理しないで…冷やした方がいいと思うよ…」
どこか照れるように言う成美は、何もかも分かっているようだった…
「あ、いいよ冷やすなんて…そんなことしてるの誰かに見られたら、恥ずかしいから…」
「そ、そう…?」
成美は心配そうに僕を見つめたまま。
本当はすごく痛いし、冷やしたいところだけど、歩美さんも今は不在。
「ごめんね…私が、一馬を誘ったりしたから…」
「ううん、成美が誘ってくれなかったら、今頃みんな…成美は大丈夫だった?他のみんなも…」
「ええ、水泳部の連中もただの脅しだけだったのよ…あんなことしないでも、優しく誘ってくれればよかったのにね…」
「なっ!成美ぃ?!…」
「ふふ、一馬くんも見たでしょ?…あの胸筋…、オリンピックアスリートみたいだったじゃない…」
そ、それはそうだけど…
「ごめん、冗談だよ。私はそうだけど、愛美や栞、陽菜ちゃんはどう思ってたか…」
「ええ…そうですね」
あのときの工藤さんの怯えた表情、今思い出しても痛々しい。
他の先輩方だって、成美のように経験があったかどうかなんてわからない。
「僕に何か出来ることがあったら言ってください…皆には世話にもなったし…」
「やっぱり一馬は優しいなぁ…自分だってあんな酷い目にあったというのに…」
「そんな僕はあんなのヘッチャラですよ。こう見えても中学時代は結構ヤンチャだったんですよ。」
そう、秀人とつるんで夜の繁華街で遊び、コワイお兄さんたちに絡まれることもよくあったんだ…