海で・・ 609
そのときだった。
「おいお前ら、何してんだ!!」
どこかで聞いたことのある、ドスの効いた声。
それが誰だったか思い出せた前に、一馬の意識は落ちていった…
…ん
…僕は、そういえば、水泳部の先輩に…
…あれ、ここ、どこ…
ああ、保健室か…僕は助かったのか?
「あ、気がついた?‥」
心配気に僕の顔を覗き込む成美の顔…
「大丈夫かぁ?随分腫れるていたけどよ…」
その横で成美のカレシの大賀先輩も顔を近づけてきた…
ぅあ…!;もしかして助けに来てくれたのって大賀先輩だったのかぁ?!
「どんな目にあっていたんだ?」
「もう、蹴られたり、踏んづけられたり、酷かったよ…」
成美が大賀先輩に説明する。
「あの男の先公がいなくなってから、水泳部の連中が圧力をかけてきたってな」
「うん…今日も私たちの練習なのに乗り込んできたし…」
藤堂先生…
僕は懐かしく思い出す…
ミキさんとのことで良く思えない時期もあったけど、今やその何もかもが懐かしい…
もし藤堂先生がいたなら、こんなことは起きなかったと思えた…
「あの…今水泳部の顧問の先生は誰なんですか?…」
「一応、今は教頭先生が顧問…みたいにはなってるらしいけど、ほとんど練習に顔出してないって」
成美が言う。
「まあ、今回のことで当分…というか部の存続自体問われるんじゃないかね?」
大賀先輩はそう言いながら立ち上がる。
「じゃ、事情を説明しに行ってくる」
「うん…」
大賀先輩は保健室から出て行った。
「一馬…大丈夫?」
成美が僕の顔を覗き込む。