海で・・ 597
「本を読めば、想像力が広がります…頭の中で、自分だけの世界が広がって、さらに知識や教養がついた気にもなるんです」
「ふむ…」
「まあ、妄想が過ぎて若干危ない人になってしまいますけど」
「いやいや…」
「鈴木くんも、想像力豊かな人だと、私は思うんだけど」
それはそうですけど…僕の場合は、その、いろいろとあれなんでね…
「実は、今回、あのようなモデルに選ばれて困っていたんです」
「まあ、僕もそうだったから」
「一人の世界に入り浸ることが好きで、同性のお友達もなかなか作れなかったんですから、私…」
「そうなの?…僕は有馬さんと話していて楽しいけどな…」
「クス…嘘でも嬉しいです…」
「嘘じゃないさ…自分の知らない世界を教えらるっていうか、スケベなことばっかり考えてしまう自分を反省するよ…」
「ぇっ?…スケベな事って…何考えていたんです?…」
「ぅあっ;…そ、それは単なる例えであって…」
「男の方って、みなさんそういうこと考えるのですかね?」
有馬さんはニコニコした微笑みを絶やさない。
「い、いえ、そんな…」
「別に責めているわけではないんですよ。私だって、そういう妄想、嫌いではないですから…」
「有馬さん…?」
「『チャタレイ夫人の恋人』だって読みましたし、ミケランジェロのダビデ像の載った写真集だって興味あるんですよ…」
チャタレイ?…ミケなんとかのなんだっけ?…
そんなこと言われても、僕にはさっぱり分からなかった;…
「…言ってしまえば、私も、興味があるってことです」
「有馬さんも…?」
意外だ…意外過ぎた。
おしとやかで大人な趣味を持つ有馬さんも…そういう…
「水内さんとは、順調にお進みですか?」
有馬さんが、僕の隣に寄ってくる。