海で・・ 595
午後の授業。
いつもは眠たくなるところだけれど、唯とのことがあったおかげ?で、目が冴えていた。
あっという間に時間は過ぎ、放課後。
真帆、茜、初音、工藤さんら部活に行く組は教室から早々と出て行った。
さて、僕はどうするかな。
そういえば、唯は部活とかどうしたのかな?
彼女も帰宅部だったら、一緒に帰れるよな…
そう思い、唯のクラスを覗くが姿は見えなかった…
なんだよ…せっかく来たのにもう帰っちゃったのかな?
「あれ、鈴木くん?…どうかしたんですか?…」
背後からの声に振り返ると、有馬さんが立っていた。
「ああ、いや、別に、ちょっとね…」
ストレートに言っていいものではないから、ちょっと躊躇った。
有馬彩花さん。
身長は真帆や唯と変わらないくらい。
明るい茶色の髪はふんわりとウェーブがかかっていて綺麗だ。
「そういえば、僕の名前、覚えててくれてたんだ」
「ふふ、私、記憶力には自信ありますからぁ」
「そうなんだ…僕、暗記物とかぜんぜんだから羨ましいよ…」
話しをごまかしながらも、それは本当のことだった。
「それじゃあ、鈴木くんは理数系なのかしら?…」
「あ、いや…そっちもぜんぜんだよ;…この学校もスレスレで入った口でさ…」
僕は照れながら頭を掻いた…
「そうなんですかぁ?鈴木くんってとても聡明に見えますよぉ」
「いや…それは見た目だけじゃないかな、きっと…」
…つい、自分をネガティブに見てしまうけど、だからって自信があるわけじゃないしねぇ。
「せっかくですし、お暇でしたら、鈴木くんもご一緒にどうですか?」
「どこに?」
「図書室です」
「部活…?」
「いえ、私、部活は入らないつもりで…本が大好きなんです」