海で・・ 583
「ふふっ…私はもう若くないって…四捨五入したら30だよ…」
「いえ、全然ですよ」
父さんと関係してなくて、ミキさんや真帆と深い仲じゃなければ、絶対に僕はあかりさんに恋に落ちてしまいそうですよ…
「そうだ…一馬くん、私、会社辞めることにした」
「えっ?」
「お父さんに尽くしたいから…もう話はしたよ、精一杯、お父さんの傍にいたいから…」
「そうなんだ…でも突然だね。」
「ずっと考えてはいたんだけど…状況が変わっちゃって…」
あかりさんはそう言いながら、お腹を摩った…
「うぇ?!もしかして、妊娠?!…」
「ふふふ…明日お医者さんに行ってくるね…」
毎晩お盛んだったのなら、そうなってもおかしくない。
もしかしたらあかりさん、妊娠前のヤリ納めに今回の旅行を計画していたのだろうか。
「一馬くん、弟か妹ができるね!」
「いや、歳が離れ過ぎてて実感ないです…」
「大丈夫…一馬くんならいい『お兄ちゃん』になれるはよ…」
「ん?…」
『お兄ちゃん』というその言葉だけを、妙に強調するあかりさんが気になった…
「どうかしたんですか?…父さんの子供だったら、男の子だろが女の子だろうが僕が『お兄ちゃん』になるに決まってるじゃないですかぁ…」
「そ、そうよね、宜しくねぇ!お兄ちゃん!」
普段と変わらないあかりさんの笑顔を見て、僕はなんだかホッとした。
2階の自分の部屋に入る。
それにしても、あかりさんが妊娠して、僕に兄弟ができるのか…
母親の違う兄弟…ミキさんや真帆と梨花さんとまったく同じ関係になるのか…なんか実感が沸かない。
期待と不安が交差する。
真帆やミキさんは、どんな気持ちだったのだろう…