海で・・ 577
「ああ、夕方って言ってた」
実は、あかりさんからメールが来ていたんだよね。
あちらもあちらで楽しんでいるようだ。
「涼はまだ寝てるし…私たちも、その頃くらいまでいてもいいかな?」
「うん、別に問題ないよ」
一人よりはみんながいたほうがいいに決まってる。
「よかったぁ〜…これで帰れって言われたらどうしようかと思っちゃった…」
優ちゃんが安心したように言う…
「ん…優ちゃん?、何か家に帰りたく無いって言ってるようにも聞こえるけど…」
茜が身を乗り出した…
「おいおい優ちゃんに限ってそんなこと無いさ…、何たって優ちゃんの姉貴は、僕の親友の奥さんだからね!…」
「あはは、確かにそうだよね〜」
真帆が言う。
ただ、それは本心のものではないのが僕にはわかった。
…言ってから後悔した。
「帰りたくないってのは冗談ですよ〜。でも…お姉ちゃんと旦那さんがラブラブ過ぎて羨ましくて、と思うことはあるかな」
優ちゃんはそう言って笑う。
「ああそれって、戸山秀人くんでしょ?…アイツ元気にしてるぅ?」
そうだよね、茜と初音は中学時代秀人と一緒だったんだもんね。
「あれ以来一度も会って無いもんね…ずっと気にはなっていたんだよね…」
思い出すようにしみじみと初音も言う…
確かに秀人は皆に挨拶も無しに退学しちゃって、海外に行っちゃたからな…
「はい、元気でいらっしゃいますよー、彩姉が出産間近なので何か物足りなさそうにしてますけどね」
…その物足りないってのはね…
「そっか…あいつ、父親になるんだね…」
初音がため息混じりに言った。
そう、僕も初めて聞いたときはそんな感じだった。