海で・・ 572
「あ、…うん;…」
図星だった…
自分に自信が持てなくて、何時も『どうせ僕なんか…』と思い、劣等感に苛まれることは今でもあった…
「私はさ…一馬くんが好きなんだよ…世界中で一馬くんだけが好きなんだ…
だから、自信持って欲しいよ…」
「真帆…」
素直に気持ちをぶつけてきた真帆は、これが初めてのような気がした。
それが、僕には、嬉しかった。
「たぶん、みんな一緒だと思う。お姉ちゃんも…」
ミキさん、梨花さん…その顔が浮かぶ。
みんなから愛される存在、かぁ…僕は全然それに気づいてなかったのかな…
真帆の言葉に勇気づけられる…
ちゃんとこの言葉に答えられる“男”にならなくちゃとも思う…
「ありがとう真帆…
本当に真帆と出会えて…幸せだよ…」
まだ幾分湿った、甘い髪の香りを嗅ぎながら…僕は真帆をギュッと抱きしめた…
…その夜は、リビングに布団を敷いて寝た。
茜と涼がそのまま僕の部屋で寝てしまったので、仕方なくといった感じだ。
「一馬くんの隣、嬉しいな」
真帆はそう笑って僕の腕を掴んだ。
たまにはこういう夜もよかったかもしれない。
長かった一日が終わる。
深い眠りに導かれるのに、そう時間はかからなかった。
コンコンとまな板を叩く音で意識が目覚めた…
「あれ…初音?、まだ明け方だよ…」
「ごめん、起こしちゃった?…音がしないように気をつけていたんだけど…」
初音は拝むように僕に向かい手を合わせた…
「謝ることなんてないさ、朝飯作ってくれてんだろ?…」