海で・・ 550
「こう見えても、初音のお姉ちゃんはシェフなんだよ〜」
茜の言葉に、僕の中に咲乃さんの姿が蘇る…
母さんの葬儀の日にわざわざ弁当を届けてくれた咲乃さん…
あの日のこと、ちゃんとお礼も言って無かったんだよな…
「咲乃さんは元気?…」
僕は初音に小さく聞いた…
「うん、この春からお店を始めたみたいだけど、なかなかうまくいってるって」
「そっか、それなら良かった」
咲乃さんがシェフを務める店の主は中原梨花さん…ミキさんと真帆のお姉さんだ。
「一度、お姉ちゃんのお店、行ってみたいんだよね」
そこで僕は、真帆初めミキさん梨花さん、それに初音のお姉さんである咲乃さんと5Pに及んだことは言わないでおきますね;…
「機会があったら、よろしく伝えてよ…」
「あ、はい…お姉ちゃんも一馬くんのこと、大好きですから〜…
…そ、そうですか。
お姉さん、包み隠さず、妹に言っちゃったんですかね。
咲乃さんの笑顔、それにあのやわらかい豊かな胸が思い出されて…
「野上さんが料理上手なのは、お姉さんの影響なんだ」
「ウチはおじいちゃんおばあちゃんの代からかなぁ。昔はお店やってたみたいだけど」
脇で初音と涼がそんな話をしていた。
おじいちゃんとおばあちゃんかぁ…
そういえば僕のじいちゃんとばあちゃんとは、母さんの葬式以来会ってないな…
元気にしてるかな?…
まあこの家には今あかりさんが一緒に暮らしているから、『遊びに来てよ』とは言えないな…