海で・・ 54
白く濁った、ドロドロした液体が勢いよく吐き出され、たちまち真帆の顔を汚す。
「…ぁん」
真帆が目を覚ましたようだ。
「…熱い…」
真帆がうわごとのように呟く。
「一馬くんの、すっごく熱い…」
真帆は顔に付いた精液を指で取って舐める。
「…それに、すっごく濃くて、美味しい…♪」
艶っぽい笑みを浮かべる。
「一馬くん、大好き…」
「僕もだよ」
「一馬くんは、私の前から、いなくなっちゃやだよ…」
「そんなことしないよ…真帆は、素敵で、大切な人だから…」
「嬉しい…」
お互いに顔を近づけ、熱いキスをした。
ー週明け。
いつものように家を出ると…
「おはよう♪」
真帆が門の前に立っていた。
「ど、どうしたの?」
一馬は慌てて寝癖のついた自身の髪を擦り着けた。
「ごめんね、突然・・」
真帆は申し訳なさそうに頭を垂れながらも、誘導するかのように首を背後に回す。
一馬はそれに促されるままに、電信柱に目をやった。
「よお。」
電信柱から顔を出したのは・・・・秀人だった。
「お、お前!どこ行ってたんだよ!?由佳里さん、心配してっぞぉ!」
一馬は秀人に詰め寄ると、その胸ぐらを掴み上げた。
「悪ぃー悪ぃー。一馬には顔見せとかなきゃって思って、真帆に付き合わせた。」
「ど、どうして真帆なんだよ!」
「そりゃー1人で来ると、一馬ひどく怒るだろ?真帆は俺らの間のクッションみたいなもんさ。」
「秀人ぉぉ!お前って奴はぁ!!真帆の気持ちも知れねーでぇ!!」
真っ赤な顔をした一馬は、秀人を殴り飛ばした。
「一馬くん⁉」
真帆が叫ぶ。
「お前、たくさんの人に迷惑かけておいて、まだそんなこと…」
腹の底から、余計に怒りが沸いてくる。
「一馬くん、違うの…」
「いいよ、真帆…悪いのは全部俺だからさ…」
何なんだ?!
面白くは無かった。
面白い筈が無かった。
秀人に駆け寄る真帆・・それを気づかう秀人・・・
まるで自分が秀人を追い詰めるただ1人の悪人のように思えた。
「何なんだ、何なんだ・・・お前ら...」
つい一昨日の真帆とのセック○の幸せが、ぼろぼろと音を立てて崩れていくようだった。