海で・・ 485
…思えば真帆が家にきたのはまだ受験勉強をしていた頃、ミキさんも一緒だったなぁ。
今回はあのときみたいなことはできないだろうけど、真帆と一緒にいられるのは嬉しいことだ。
部活のこともあってすれ違いばかりだったからね。
…話が一通り決まって良かった。
あっという間に時間は過ぎ、放課後になった。
茜たちに誘われるがままに演劇部の衣装部屋へ…
部室とは別にこんな部屋の使用を許されているなんて、流石全国高校演劇部の大会で、連続優勝しているだけのことはあるよな…
「ちゃんと許可貰えたんだろうな?…」
「もちろんよぉ。顧問の内田先生がOKくれたんだから、誰も文句は言わないよぉ。」
香織さんか…
あの人だったら喜んで貸してくれそうだよな…
…良かれ悪かれ、人には恵まれているものだと思う。
衣装部屋の中。
さすがにいろいろ揃っているな…のだが、やはりと言うべきか、そのラインナップはいろいろおかしい。
メイド服、チアガール、セーラー服(一昔前のスケバン的なもの)、さらにウエディングドレス…やっぱり元が女子校だとこうなるのかね…
「そんな徐に嫌な顔しなくても大丈夫だよ。男役の衣装だって山とあるんだからさ。」
「あっ植田先輩、今回はなんだか、どうも…」
「気にしなでいいよ。もう何年も着ないもんばっかりなんだけど、やっぱり先輩たちが懐かしがるから捨てられないんだよね。」
「OGとかですか?…」
「うん。この学校の校長だってここの演劇部出身なんだよ。」
あの年令不祥の校長かぁ。
30代と言われればそうも見えるし、50代と言われればそうとも思える…美人だけど魔女みたいな人だ。
奥のほうでは茜と真帆がもう衣装を数着選んでいる。
…さすがに仕事が早いな。
「男性用はこっちね」
植田先輩が指差す。
「あ、どうも…」
普通のスーツに羽織袴、野球やサッカーのユニフォームに軍服…こっちもいろいろあるな。
「ところで…先輩は2年生で部長なんですね」
「うん…3年生が一人もいなくてね。廃部の危機だったんだ」