海で・・ 458
いつにも増して鋭い…;
真帆や初音には通じる嘘も、茜だけには何時も見抜かれてしまうのだ;…
「そ、そんなことも無いさ…こう見えてもなかなかの腕なんだぜ…」
「どうせ一馬くんの言う卓球って、温泉旅館にあるピンポンなんじゃないのぉ?〜」
うっ…;
今日は一段と冴えていらっしゃる;…
…もう返す言葉がない。
完全に困り果てた僕に、茜が肩を叩く。
「私たちも言い過ぎたかも。無理して考えなくていいから、頭の片隅にでも、覚えててくれたら嬉しいな」
…なんだかんだで、僕のことを気遣ってくれるいい奴なんだよな…茜って。
「ああ、僕にも何か出来ないか考えてみるよ…」
裏方だったら、協力したい気もするしね。
「そうだよぉ、ボーイズラブに抵抗あるなら、義理の母親と関係を持ってしまった悩める少年の話し、書くからさ…」
ドキ…;
おい…茜ってあかりさんの存在、知っていたっけか?…
「そりゃまたすごくリアルな話だね」
香織さんが反応する。
「ね、ねえ、茜、それって…」
真帆が戸惑った顔をして茜に言う。
…ああ、真帆は確か知ってるだろうから…
「構想は大体出来てたんだよね…等身大のモデルもいるからさ」
茜は優しい顔で微笑む。
「…そ、そっか…鈴木くん『も』そうなんだね…」
「え、瑠璃さん?」
植田先輩の震える声に、茜が驚いた。
『も』って何ですか?…『も』って…;
僕とあかりさんは確かに一回だけ間違いはあったけれど、あれは言ってみたら事故みたいなもんで、僕は全くそんなことを望んではいなかった訳で…
「もしかして瑠璃さん『も』…未知ならぬ恋をしているとか?…」
だからその『も』って何なんだ?…『も』って…;