海で・・ 457
「いや、あのさ…」
涼が困り気味に言う。
こいつはこいつで真帆の相手役だったから、脚本の書き直しは望んでなかっただろう。
「あら、どうしたの?」
そこにやってきたのは、演劇部の顧問、香織さんだった。
「あら鈴木くんもいたのね?…やっと演劇部に入る決心ついたんだぁ!」
無邪気に満面な笑みを浮かべる香織さん…
藤堂先生の前での妖艶な姿とは別人ですね;…
「あ、そういう訳では無いんですよ…偶然に出くわしただけで…」
ここでづるづると入部でもしたら、涼とのラブシーンをやらされそうだもんな;…
「まあまあ堅いこと言わずに、一度ゆっくりと見学してよ〜」
「いやその、ちょっと…」
それこそ流されてしまいそうだ…
「えっと、先生、ちょっと」
植田先輩が香織さんに話しかける。
「実は、今度の演目なんですが…」
早速脚本書き直しの話だろうか。
このまま有耶無耶にしてると、絶対後戻り出来なくなるよな…;
それこそ植田先輩と茜が考える危ない世界に、ズルズルと引きずり込まれるに決まっているよぉ…;
[実は僕!卓球部に入ろうと思ってるんです!」
夕べあかりさんとの会話で出た『卓球部』が、咄嗟に口から出てしまった。
「ええええ!?」
「…また唐突に、なんで?」
香織さんと植田先輩が驚きの声をあげる。
「あ、あー、いえ、その…」
咄嗟に言ってしまったので、次の言葉が見つからずにしどろもどろになってしまう。
「ホントは何も決まってないんでしょ」
茜が突っ込む。