海で・・ 435
そうなのか…
工藤さんにはそんな事情があったなんて。
…まあ、見られたモノがモノだから僕だって恥ずかしかったんだけど。
工藤さんは僕の方をチラチラと見ている。
僕は笑顔で工藤さんに会釈する。
少し照れていたけど、彼女も笑ってくれた。
「何ニヤけんてんのよぉ!」
横から初音に小突かれる…
「ニヤけんてんじゃなくて、照れ臭いんだってぇ…;」
僕は鼻の頭をポリっと掻いた。
「それもそっか、見られちゃったんだもんね…」
「ああ…何時も以上に小さく縮み上がってんのをさぁ…;情けないよ…」
「ふっ、それなら一層のこと、大きくなったところを見せた方が自信もてるんじゃない?」
「いや、それはもっと恥ずかしいかも…」
「それでこそ男だよっ」
「いや…昨日の今日でそんなこと考えられないよ…」
「まあ、そうだよね」
初音は僕の肩をポンポンと叩いて自分の席に戻っていく。
授業はあっという間に過ぎ、放課後。
今日は特に何も用がないのでさっさと帰ろうと思っていた。
「あっ、鈴木くんだ」
板野先輩だった。
ヤバいよな…また練習に誘われたら困るしな…
「ども;…昨日はみっともないとこ見せちゃってすみませんでした…」
一応、挨拶はちゃんとしとかなくちゃだよな…
「ううん〜…こっちこそ何だかゴメンね…大丈夫だった?…」
板野先輩は僕の前髪を掻き分け、額にそっと手を宛がう…
「あ、わっ」
いきなりの行為にドキッとする。
「大丈夫そうね」
ニコッと微笑む板野先輩。
健康的な小麦色の肌が麗しい板野先輩。
昨日のプールのときといい、男の扱いに慣れているような気がする。
「今日は…」
「今日は練習はお休みなの。一馬くんはお暇かな?」