海で・・ 372
「父さんは二日酔い?」
シンクから振り向くあかりさんは鬼の形相だった。
「どぉ、どうしたんですぅ!?」
「もぉ〜ホントむかつく!お父さんの身体、キスマーク着いてたのよぉ!」
へぇ〜スケベ親父の接待は、"ヘルス"か"ソープ"だったんですね…
「酷過ぎると思わない?私がこんなに一生懸命尽くしているっていうのぉにぃぃ〜」
…昨日の僕とのことは、棚に上げての会話ですね:…
それだけあかりさんが父さんのことを愛しているのはわかるし、いいことなんだけど。
「…でもあかりさん、昨日は僕と」
「そ、それはそれ。これは…」
…理由になってませんよ。
まあ、父さんも人並みにそういうのを求めているってことで…
あかりさんが朝食を作ってくれて、僕に差し出す。
チーズとろけるホットサンドを頬ばりながら、あかりさんの顔を伺う…
プッ…
まだ不機嫌そうな膨れ顔を見て、思わず笑ってしまう…
「な、何?…どうかしたの?」
僕の笑いが意外だったのか、あかりさんは驚いように声高を上げた。
「すいません笑ったりして…ただあかりさんの怒った顔、初めて見るから…」
「やだぁ、怖い顔してた?」
「そんなんじゃ無いんです…こうやってこれから、あかりさんのいろんな顔が見れるんだなって思うと、嬉しくなっちゃいます…」
僕がそう言うとあかりさんは少し頬を赤らめた。
「べ、べ、べ、別に、一馬くんに、そんな、楽しませるようなことなんて、別に…」
慌てて何か否定するあかりさんが、なんだか可愛く見える。
「あかりさんはツンデレですね」
「そ、そういうわけじゃ…って、ツンデレって何?」
「ははっ…まあ可愛いってことですよ!」
「やだぁ〜一馬くんったら〜朝からそんなこと言って……もしかして、ヤリたいのぉ?…」
…ゲゲェ!!?
「じょ!…冗談止めてくださいよぉ……父さんに聞かれたらどうすんですかぁ……」