海で・・ 347
その視線に思わずドキッとする。
いや、ホントは、昨晩、しかも4人と…なんてことあかりさんに言えるはずもなく、ただ曖昧に受け流すこともできないでいると
「まあ、仕方ないよね…」
一人で納得されても困ります…
「ま、それはそれね…これ洗うから、着替えてね」
ポンと投げられるた小布を片手でキャッチする…
あの時に貰った、あのパンツだった…
「ど、どうしてコレをぉ?…」
「着替えを持って来てあげようと、箪笥開けちゃったぁ!」
笑いながらリビングを出ていくあかりさん…
…僕にコレを穿けってことなんでしょうか?
…よっぽど僕にはいて欲しいんですね、これ。
仕方なくいそいそと立ち上がって、自分の部屋に向かう。
このパンツ一枚じゃ恥ずかしいから、部屋着のジャージかスウェットを出そうか…
あかりさんは鼻歌交えながら洗濯物を持っていった…
…嬉しいんですか、何がそんなに…
そんなあかりさんを見て、クスッと笑ってしまう…
それは母さんを亡くしてから以来、初めての”笑い"だった気がした…
確かにあかりさんが現れてから、僕は母さんのことを忘れていられていた…
母さんには悪いと思いつつも、今の僕には凄くありがたい存在であった…
母さんとは呼べないけど、あかりさんなら、母さんの代わりになってくれるはず…僕はそう思った。
自分の部屋でジャージを穿いてリビングに戻ると、あかりさんはコーヒーを入れて寛いでいた。
…こうして見ると、やっぱり魅力的な人だなぁ…父さんが惚れるのもわかるような。