海で・・ 343
「こんなところで、こんなときに言うのもなんだけどね」
あかりさんは、僕の顔を見つめ、話し出す。
「お父さんに言った。私、一馬くんの力になりたいって」
「あかりさん…」
「よそ者なのは仕方ない。血のつながりなんて全然ないし、いろいろ言われるかもしれない…でも、私、決めたの…」
あかりさんの表情には、一つの決心が見えた。
嫌な予感がした…
はっきり言って、いい気はしなかった…
僕の力?…
あかりさんの助けを借りるつもりなど更々無かった…
それでも父さんの助けになると言うのなら、それはそれで構わないけど、そこに僕を持ち出すのは、止めて欲しかった。
「私…一馬くんの家族になるは!…」
はあ?
僕の嫌な予感は的中した…
「あの、いいです…」
嫌、というか、明確に拒否してもよかったと思う。
でも、あかりさんを傷つけることもしたくなかった僕は、曖昧にそう返した。
「一馬くん?」
「貴女は僕の何なんですか?どうしてそんな簡単にそう言えるんですか?」
…本当は、こうは言ってはいけないのはわかっていたんだ、でも…
「しっ!…そんなに大きな声出したら、誰かに聞こえちゃうはぁよ…」
腕を捕まれ、斎場のスタッフオンリーの倉庫に引きずり込まれる…
「あ、なんか興奮しちゃって…ついデカイ声になっちゃいました…すみません。」
僕はいつもの癖で、つい謝っていた…
スペースの狭い倉庫に2人。
あかりさんは、困ったような顔をして僕を見つめる。
…そんな顔しないでください、僕だって辛いです。
「ごめんなさい、軽はずみで失礼なこと言っちゃって」
「い、いえ、そんな」
「一馬くんの気持ちも知らないで、自分勝手でごめん」
「いえ、全然、そんな…」
立て続けにそんな、言われたら、僕ももう、あかりさんのことを否定できないです…
「…私も、一馬くんくらいの歳で、母を亡くしてるの…」