海で・・ 340
「子供は順調なのか?」
「ああ、夏になればって指折り数えてんだ。」
「夏かぁ〜。去年の夏に知り合って、今年の夏には父親かよ〜」
「ははは。俺も想像もしていなかったぜぇ。一馬だってこの先何が起こるか分かんねぇーぜぇ」
笑いながら僕の肩に腕を回してくる。
「なんだよ、暑苦しいなあ」
「照れんなよ、1年前まではこうして戯れあってたじゃねーかよ」
「そうだけど…もう僕たちはあの頃とは変わったんだよ…」
「大人になったてことか?」
「うん、なれてるかは分からないけどさ…」
秀人は僕の肩に頭を凭れ掛けてくる。
「なんか…寂しいよな…」
「寂しい?」
「ああ。ホントなら、俺も一馬と同じように高校進学して、また一緒に遊んだりナンパしたりできたのかなって時々思うんだ…あぁ、もちろん彩のことが嫌いだってわけじゃないぞ」
「わかってる。僕も時々そう思うよ」
…こういうときに話すことではなかったと思う。
ただ、重い雰囲気で、気を紛らわしてくれた秀人には感謝している。
「子供のまんまでいたかったよな。」
僕はポンポンと秀人の頭を撫でた…
「うん。勉強とか嘘言って、お前ん家で夜中までゲームして…エロビ観て…」
「母さんが夜食運んでくれてな…」
「ああ、おばさん特性のコロッケ…滅茶苦茶旨かったよな…」
思い出話に花が咲く。
「真帆とも、美貴さんとも、順調そうだな」
「ああ。さっきまで、もう一人のお姉さんと一緒にいたんだ」
「もう一人?」
「2人とは腹違いの…アヤさんから聞かなかった?」
「そーいや…そんなことも言ってたような…」
「ははは…相変わらず秀人は人の話し聞いてないんだぁなぁ〜」
「な、ことねーよ!俺は何時だって一馬の良き相談相手だったじゃねーかよ…」
「何も聞いてないから、話しやすかったんだよ。いつも聞いてるうちに居眠りこいてただろ?」
「そ、そうだった?;」
「でもさ、そんなサウンドバックが僕には必要だったんだって、今更気付いたよ…」
僕は肩に凭れ掛かる秀人の髪に顎を乗せる…
「一馬…俺らいつまでも親友だぜ…お前の為なら何時だって飛んで来るから、元気出せ!」
秀人は腕を伸ばし、僕の髪をもしゃもしゃとかき混ぜた…