海で・・ 339
その後、父さんや母さんの兄妹親戚が数人やってきて、女医さん含めそれぞれいろいろと話をしていく。
僕はそれを横目で見つつ、咲乃さんが作ってくれたというお弁当を食べる。
…美味しかった。でも、正直、もっといい雰囲気の中で食べたかった。
それでも咲乃さんには感謝するほかない。
袋の中に弁当箱と一緒に一枚の紙が入っているのに気づいた。
『一馬くんのお母さんがよくなりますように by咲乃』
ありがとう咲乃さん…それに遠いところをわざわざ来てくれた梨花さん…
感謝せずにはいられ無かった…
そこに…
「一馬!おばさんの具合は!?…」
「秀人!…どうしてお前が!?…」
「美貴さんに連絡貰って飛んで来たんだ。当たり前だろぉ?ガキん頃から一馬の母さんには散々世話になってきたんだ…」
「そうか…ありがとう」
「で、どうなんだよ、おばさんの具合…」
「ああ、正直、厳しいかも、って」
「そうか…」
秀人の家とは家族ぐるみでの交流があり、お互いの家に行って遊ぶこともしょっちゅうあった。
まさか、ここに来るとは思ってもいなかった。
「姉貴も心配してた…ここに来るのは遠慮しとくけど、呉々もよろしくって…」
由佳里さん…皆、心配してくれてんだな…
「仕事の方はいいのか?」
「ああ、『一馬くんの側にいてあげて』って彩がチーフに連絡してくれてな…」
「アヤさんが?」
「ああ、何しろ家の会社で彩に逆らえる奴なんて、いないからね!」
そりゃそうだ。
アヤさんは創業者の娘で、姉の唯さんが経営に携わらないから一番経営にかかわっている人…
秀人はそのアヤさんの旦那だ、逆らえるはずもないし当然といえば…
「アヤさんは大丈夫なのか?」
「ああ。子供産む前日まで仕事してたいって言うくらい元気だぞ」