海で・・ 337
父さんは携帯でどこかに電話し始めた。
親戚か、母さんの両親か、それとも、あかりさんだろうか…
会話の内容もよくわからないが、母さんの深刻な状態を伝えているような感じだった。
僕はそんな父さんの姿を見ながら、母さんの体を案じた…
悶々とした時間だけ過ぎていく…
グッウゥゥ…
腹の虫が鳴り、もう昼過ぎなのだと気付かされる…
「何か食べて来なさい、ここは父さんがいるから…それに中原さんに信藤さん、ここはもう…」
「いえ、どなたか親戚の方がみえるまで一馬くんの側にいさせて下さい。お願いします。」
ミキさん…
「迷惑でしょうが、私、一緒にいさせて欲しいんです。」
真帆…
「そうか…ありがとう」
父さんはそう言うと、また携帯を手にしてどこかに電話しだす。
ミキさんと真帆のお母さん、紀美子さんは僕の父さんと同級生、もしかしたら、あっちの関係があるかもしれない存在…それだけに、父さんも2人を頼もしく思っているのは間違いなかった。
「病院の食堂って使えるのかな?それとも、近くのコンビニでなんか買ってこようか?」
ミキさんが言う。
「外の空気が吸いたいんだ…買弁でいいかな?」
「勿論よ!」
病院の庭に出ると、荷物を抱え遠くから駈けてくる女性が見えた。
「お姉ちゃん?…」
「え?梨花さん…?」
それは間違いなく梨花さんだった。
「一馬くん何か食べた?咲乃が心配して持たせてくれたのよぉ…」
梨花さんは弁当箱の入った袋を持っていた。
「…ありがとうございます…でも、なぜここに」
「誰が連絡したんです?」
ミキさんもそう言えば、真帆も視線を向けると首を横に振る。
「うん…実はね…」
梨花さんは事の経緯を説明してくれた。