海で・・ 307
それを咎める人はどこにもいなかった。
ミキさんも、真帆も、僕と同じだったのだから。
「美味しいですぅ!こんなの生まれて初めて食べましたぁ!」
「さすが、お店出す人は違うよねぇ…」
2人とも感動しきりである。
「ありがとう、3人とも。作った彼女も喜ぶわ〜」
梨花さんはニコニコである。
朝から何も食べていなかったせいか、僕は二人よりも多くの料理を口に運んだ…
「男の人が沢山食べる姿って、気持ちいいものね…」
横に立つ梨花さんが、頬笑ながら皿に取ってくれる…
「す、すみません、僕ばっかり…」
「私たちには構わないでいいよ。残すのももったいないじゃない…」
ミキさん…貴女はホント天使みたいな人ですよ…
「そうそう、食べ物は粗末にしちゃダメなんだぞ〜」
そう言う真帆も、女の子捨ててガツガツ食べてるんですけど…
「…梨花さん、すごいですね」
「私がすごいんじゃないよ」
「…でも、梨花さんが、お店を開こうって思わないと、この料理、食べられなかったんですから…」
「よかった、一馬くんや美貴ちゃん、それに真帆ちゃんにそう言って貰いたくて、店を出したようなものなの…だから、願いが叶って本当に嬉しいは…」
「そんな…私たちの為に…?」
「ええ…あなたたちとこうしてテーブルを囲みたいと…ずっと思っていたは…」
梨花さんの目に、光るものが見えた。
「私もです、梨花さん…いえ、お姉ちゃん…」
「美貴ちゃん…」
「私も、幸せです」
「僕もですよ」
ミキさんに続き、真帆と僕もそう言うと、梨花さんは涙を堪えながら、微笑んだ。