海で・・ 299
梨花さんは微笑むと
「でもね、こういうのは誰にも知られずにサプライズでやりたいじゃない?それに、私だけじゃなくて、従業員のみんなががんばってくれて」
「従業員も雇ってですか」
「向こう、海外だけど、それに近いことをやってたの」
それは知らなかった…
ミキさんも真帆も同じように驚いたような顔をする。
「3人に聞いてもらいたい事はいっぱいあるのぉ。それに聞きたいこともいっぱいよぉ。」
「私たちだって同じですよ…お姉さんが今までどんな生活してきたのか、ぜんぜん知らないんですもの。」
「美貴ちゃん…今"お姉さん"って…?」
「当然だは…梨花さんは私にとっては唯一の"お姉さん"ですもの…」
「み、美貴ちゃん…」
梨花さんの声が、肩が、小刻みに震える。
「そうですよね。私にとってのもう一人の”お姉ちゃん”だもんね!」
真帆も言う。
「ふ、2人とも…」
梨花さんの瞳から涙がこぼれ落ちる。
「よかった…本当によかったです…」
僕の眼からも、梨花さんに負けない位の大粒の涙がこぼれ落ちる…
「やだぁー、何で一馬くんが泣くのよおょ〜」
そう言うミキさんの瞳からも、キラリと輝くものがこぼれて落ちた…
「もぉ〜…一馬くんは……涙もろ過ぎ…なん…だぁからぁ〜」
自ら美人と豪語していた真帆は、その面影も無い程に顔をくちゃくちゃに崩していた…
…気がつくと、みんながみんな、人目を気にすることもせず涙を流していた。
僕なんて、肉親などでもないのに…
でもそれだけ、この三姉妹が今まで背負ってきた苦労が大きかったかを物語る。
梨花さんも、ミキさんも、真帆も…
そんな3人が、今こうやって巡り会えたこと、本当によかったと思う…