海で・・ 293
そのままお互い抱きしめあう格好になり、勢い余ってミキさんをソファーに押し倒してしまう。
「ふふふ、意地っ張りで可愛いわねぇ」
「そんなことないですよぉ…」
それでも自分がむきになっているのは明白。
クスクス微笑むミキさんの唇を、不意に奪う。
「ん、んっ、んっ、ん…」
最初は驚いた感じがしたミキさんだったが、僕の行為を受け入れ、背中に手を回してきた…
このまま突進していいのか?…
ごまかしの成り行きで抱きしめたことが、ここまでくると…さすがに焦る気持ちは確かにあった…
それは、ミキさんの積極的な行為よりも…むしろ“大丈夫…僕?…"と自問自答する気持ちが大きかった…
何たって僕は…つい数分前にトイレで精を放ってきたばかりなのだから…
ミキさんの豊かな胸が当たる。
「昨日から、積極的ね」
「なんか、ちょっと…」
「もう、料理の効果じゃないでしょ?」
そう微笑んで僕の股間に触れようとするミキさん。
…それはそうだ、でも、ミキさんのさっきの行為が…
モヤモヤとした欲情が頭いっぱいに広がるのだが、昨晩あれほど大量に射精したにも関わらずトイレでオナってしまった僕は、脳の興奮が即座に下に降りてはいなかった…
股間に伸びるミキさんの手から逃げるようにして、僕は腰を浮かした。
女性と違い、男の身体は顕著にそれが現象として現れる為に、演技や誤魔化しはきかないのだと、僕は今さらにして気づく…
そのままミキさんの身体から離れ、ソファーに腰を下ろす。
「ごめんなさい…」
「謝ることないよ。むしろ嬉しかった」
これから重要な事が待っているのに、こんなことをしている場合じゃないのはミキさんもわかっているはず…
「また後で、ね。真帆のところに行こっか?」
「そうですね」
ミキさんが微笑んだ。