海で・・ 274
「なんか緊張しちゃいますよ…この部屋だけで、僕の家よか広いんじゃないかな?」
「落ち着かない…?」
「はい…どっちかって言うと、穴蔵みたいに狭い所の方が、僕には合ってるかな?…」
「それなら……ソファーとベッドの間にシ―ツ掛けて、穴蔵作っちゃお!…」
いやいや…何言ってんですか…
「すいませんミキさん冗談です冗談です」
「ふふふ、一馬くんったらぁ〜」
ワシワシとミキさんに頭を撫でられる。
「さぁて…シャワー浴びようかな…一緒に入る?」
「えっ?うーん…」
―と、両隣で何か物音がする。
アヤさんと唯さんが両隣で一泊するのはわかってるけど…
このスウィート、壁が薄かったりするのかな…?
「見掛けによらずヤスブシンだったりするんですかね…?」
「そんな筈無いと思うけど……でもこんな音、変よね…一間続きのパーテェ―ションだったりするのかしら?…」
僕とミキさんは、怪訝な顔で隣との間の壁に耳を擦り寄せる…
「ふふっ、ねえ…」
唯さんの声。
…話しかけている相手は、さっきのホテルマンだろうか。
「…すごく、よく、聞こえます…」
「…そういうための部屋なの…?」
ミキさんも僕もなんだか恥ずかしくなって、目を合わせづらくなる。
「どういうことですかね?…」
「ここって…大人数のパーティーなんかにも対応できる、広間なんじゃないかしら?…」
「それを今は三つに区切っているんですか?…」
「多分…そうじゃなきゃこんなに隣の声が聞こえるって…なんか変じゃない?…」