海で・・ 253
「はい、どうぞ」
「…あ、ありがとうございます…」
あかりさんの手料理を頂く。
「…ん…美味しい」
「本当?ありがとう」
母さんが作るのとはまた違って、新鮮な感じがした。
「あかりさんは、父さんにもこうしてご飯作ってきたんですか?」
「そうでも無いかな…ちょっとしたおつまみを作ることはあるけど、お父さんお家で食べるでしょ?」
確かにそうだった…
僕に気を使ってか、母さんがいない時でも家で食べることは多かった。
「へぇ〜こんなに美味いのに父さんは損してますよ。何か秘訣とかあるんですか?」
「特別なことはしていないけど… 山芋に鰻、それにスッポンなんかも入っているから、精はつくんじゃないかしら…」
「ぶっ!?」
「あら、大丈夫?」
…精力剤じゃないんですから!
…そりゃ、やるものもヤりますわね。
「お父さんも美味しく食べてくれるから、私も嬉しくて」
「はあ…」
作るものは別としても、あかりさんは本当に嬉しそうに微笑む。
吊られてこっちまで笑顔が溢れる。
笑うとどこか心の中が暖かくになるから不思議だ…
「どうかしました?汗かいちゃって?」
あかりさんが素手で額を拭ってくれる…
確かに食事が進むにつれ、心どころか身体まで熱くなっていた。
「い、いえ…なんかこの部屋暑くないですか?」
「そう?そうは思わないけど…あ、お父さんに出すような食材では、若い一馬くんには効き過ぎちゃったかしら?」
こ、これがまさか、『精のつくもの』の効果なのか!?
…父さんが仕事に追われてるのにいつも元気なのにも頷けるな。
「お父さんが大好きなものだから、一馬君もきっと美味しく食べてくれるかなぁって」
「そ、そうっすか…」
特別身体がおかしいですってわけじゃないからいいんですけど。
「あかりさん、家のことに関して、父さんからは聞いてるんですか?」
「うーん…あんまり話してはくれないんだけどね…」