海で・・ 221
僕の困惑した表情を読み取ったのだろう…優ちゃんはポツリと呟く…
「やっぱり、いない訳ないか…一馬さんみたいにカッコよくて優しい男の人に…いない訳ありませんよね…」
寂しそうに肩を落とす優ちゃんを抱き締めたい欲望を、僕は堪えた。
「僕は…優ちゃんが思っているような男じゃないよ…」
「そうなんですか?でも、彩姉からは他人のことも理解してくれる優しい人って聞きましたよ」
アヤさん…
あの人には頭が上がらない思いだ。
「私も、頑張って一馬さんに振り向いてもらえるような女の子にならなくちゃな」
「ん?それ、本気で言ってる?」
「はい!」
優ちゃんが僕の前で初めて自然な笑顔を見せた。
つられて僕も笑ってしまった。
「…一馬さんって、笑うとえくぼが出来るんですね…」
「うん、片えくぼ…。優ちゃんは両方出るんだね。」
僕はそっと優ちゃんの頬に触れる…
優ちゃんは頬を強張らせながらも、それに返すかのように僕の右頬のえくぼに指を伸ばしてくる…
「えへへ、可愛いですね〜」
そう言ってニコニコしながら指で頬をつんつんとしてくる優ちゃん。
緊張が解れると姉譲りのお調子者になるのか?
お返しといわんばかりに、僕も優ちゃんの頬を指で摘んでみる。
「んひっ?」
お、柔らかいな。
ついでにもう片方の手で反対側の頬をつねって…おお〜
「ひ、ひはいへふお〜(い、痛いですよ〜)」
可愛い子ってこんなに顔を崩しても、やっぱり可愛いんだな…
妙に感心してみたりもする…
高校に入学したらきっと、男子からの注目度は真帆と二分するんだろな…
そんなことを考えている僕の頬を、優ちゃんも負けじと引っ張ってくる。