海で・・ 216
アヤさんの隣に立つのは、それこそアヤさんを小さくしたような女の子だった。
黒髪のセミロングに少しウェーブがかかった感じで、はにかんだ笑顔が可愛らしい。
僕はドアを開けて、二人を迎え入れる。
「ごめんね、突然話を入れちゃって」
「大丈夫ですよ。もともと暇を持て余していましたから」
「ふふ、そうなんだ…で、紹介するね、妹の優」
「初めまして。小島優です」
「鈴木一馬です。こちらこそよろしく」
「カッコイイでしょ?〜一馬くんは凄いモテるんだよぉ!」
「うわぁアヤさん、変なこと言わないで下さいよぉ〜!優ちゃんが誤解するじゃないですかァ〜」
僕はさりげなく“ちゃん”付けで呼んでみた。
それに気づいたのかアヤさんは、ニヤリと頬を上げた。
「一馬くん〜、優“ちゃん”のこと、よろしくねぇ〜!」
そう言いウィンクするアヤさんが何を言わんとしているのか、さっぱり分からない…
「じゃあ私はいったんお別れ♪」
「えっ!?お姉ちゃん帰っちゃうの?」
アヤさんの言葉に優ちゃんがビックリする。
「せっかくのご対面に私がいたら余計でしょ?それにお買い物も済ませておきたいしね」
「えっ、でも…」
僕も思わず言葉が出てしまう。
「じゃあ、後はお二人でお楽しみを〜♪」
「えっ、ホントに!?」
優ちゃんがオロオロしているのを尻目に、アヤさんは出て行ってしまった。
…まさかの、初対面の女の子といきなり二人きりである。
「ご、ごめんなさい…こうでもしないと、私が男の人と喋られないだろうと…彩姉、気を使ったんだと思います…」
「男の人と喋られないって?…どういうこと?」
「知っての通り、家って女系家族でして…」
ああ…確かに女姉妹ばかりだよね…
「それに幼稚園から女子校で、先生も女ばかりで…」
男の僕からみたら、羨ましい環境ですよ…
「だから、お父さん以外の男の人とあまり話したことも無いんです…」
そうか、そうだよね…
家庭環境が極端だと難しいこともあるよね…
「でも、高校は共学にしたのは何でなの?」
「唯姉も彩姉もそうだったから、私も高校は普通の共学校を受験したんだけど…」
…そればっかは慣れるしかないよね。
真帆や茜に紹介して、仲良くなってもらいたいな…
「…あ、ずっとこれもなんだから、上がってよ」
「あ、ごめんなさい、わざわざ」
そのまま優ちゃんをリビングに案内した。