海で・・ 196
…赤い顔しちゃって、斎藤さんどうかしたのかな?
僕は心配に思いながら、斎藤さんが佇む所まで近づく。
「斎藤さん、顔赤いですけれど、熱でもあるんじゃ?」
失礼とは思いつつも、斎藤さんの額に僕は手を宛がった。
「そういうことじゃないから…」
斉藤さんは僕の手を跳ね除け、いきなり僕に抱きついてきた。
「えっ?」
「…中原さんが言ってた年下の彼氏くんって、君のことだったんだね」
…知ってたんですか
「もう…ちょっと様子を見ようと思ってたら、あんなこと…」
見てたんですか?
「別にのぞき見するつもりなんて無かったの…
ただ、藤堂さんが貸し切りなのを知らずに入って行こうとしたから…」
「藤堂さん?…」
「ええ、一緒にトレーニングル―ムにいた男の方…知り合いなんでしょ?」
「いえ、知り合いって訳では…」
僕は小さく答えながらも、斎藤さんとあの男に、ミキさんとの情事を見られた事を思うと、赤面せずにはいられなかった。
「ふふふ、可愛いのね」
斉藤さんはまだ紅潮した顔で、ニッコリと笑った。
「大丈夫よ。施設をカップルで貸しきってあんなことやこんなことしちゃう人は以前にも結構いたみたいだし」
「ホントですか…」
「私が見たのは君が初めてだけどね」
斉藤さんの笑顔が『ニコリ』から『ニヤリ』に変わった気がした。
「他の人もやっているからって、やっぱり見られていたことは、照れますよ…」
僕は鼻頭をポリッと掻いた。
「まあそれはそうかもしれないけど、監視室のモニターには、プールでの全てが録画されいるはずよ。」
「うえ?! マジっかぁ?!」
「ふふ、一緒に行って、確認してみる?」
…もちろん僕は、斉藤さんに監視室への案内をお願いした。
ミキさんとのHが録画されたものなど、直ちに消去しなければと思ったのだ。