海で・・ 184
しなやかに伸びるミキさんの身体は、アスリートのようだった。
ミキさんに見た目だけでも釣り合いの取れる男になりたい…
僕は、あの男の引き締まった身体を見たせいでか、どこか劣等感を抱いていた。
「よそ見してちゃダメよ…」
物思いに耽っていた僕は斎藤さんに軽く諌められる。
「さあ、集中して初めましょう。」
個室の扉は、ゆっくりと閉められた…
…さて、体力測定だが、とりあえず大きなミスはなくこなすことは出来た。
ただ、やっぱり半年ほどのブランクは大きく、少し数値が落ちたような気がした。
「うん、15歳男子の平均は超えてる」
斉藤さんは測定データの紙を見て、そう言う。
「部活をやってた頃に比べたら、まだまだです」
「それでもスポーツをやってたんだね。すごいわ」
測定を終えたら、今度はトレーニングルームの器具の使い方を斉藤さんに教えてもらう。
ミキさんがいるルームの中に、斉藤さんと入っていく。
先を行く斎藤さんのポニーテールが、馬の尾っぽみたいに揺れて見えた…
白のポロシャツの背中に、薄っらとスポーツブラが透けている…
自ず、視線は下がる…
女性にしては小振りで締まった尻を、僕は気ずかれないよう、そっと盗み見た…
一通りの説明を受ける。
ランニングマシンや自転車型のマシン、他にも筋トレ用の器具がズラリと並ぶ。
「何か判らないことがあったらなんでも聞いてくださいね」
斉藤さんがにこやかに笑って言う。
ふと見ると、あの男は重そうなベンチプレスを持ち上げていた。
…アレは今の僕では無理だな
「一馬くん♪こっちだよ」
自転車型マシンに乗っているミキさんが、手招きする。
何時の間にかジャージを脱いだミキさんのTシャツは、汗で薄っらと濡れていた。
それでもタオルで顔を押えながらマシーンを漕ぐミキさんからは、柑橘系のいい香りしかしなかった。
「ゴメンね〜個室とは言っても、ここはVIP専用のトレーニングルームだから…」
…あ、あの男のことか…
部屋の隅で上腕二頭筋を膨らませながら、軽々とダンベルを持ち上げる男を僕は何気に見る。
…それにしても、高校教師でVIP会員とは…あの人って、何者なんだ?