海で・・ 163
「仕事は順調なのか?」
「ああ、まだいろいろ覚えるのが中心だけど。それと、仕事しながら通信制で高校に通えるらしいんだ」
「へえ」
秀人の顔は、少し年上の兄貴分的な感じがした。
それだけ、この半年の間に人間的に成長した証なのだろう。
「一馬、お前はどーなんだよ?」
「ん、僕は真帆ともミキさんとも上手くやってるよ」
「真帆か……懐かしいな…」
秀人は思いに耽るような…遠い目をした。
考えてみれば、真帆をあんなにエッチな女の子に仕込んだのは秀人なのだ…
そう思うと複雑な感情も生まれくるけど…
その恩恵に充分に与かっていることを思えば、感謝こそすれども恨んではいけないと思えた…
「あいつはすっかり俺のことなんて忘れちゃったんだろうな」
「さあ、どうだろうな」
あえて本当のことを言うのはやめておく。
「立ち話も何だし、どっか入らないか?」
僕と秀人は、近くのファストフード店に入って話を続ける。
チラチラと女の子たちから盗み見される秀人…
苦労していたのか、その身体はシャープになり、イケメンぶりは数段に上がっていた。
(「いつも、真帆の引立て役だから…」)
茜の言葉が蘇る…
一緒だった…
こうしてる今も、僕は秀人の引立て役にしか思えず、
茜の気持ちを痛感する。
そんなことを思いながら秀人を見る。
「なんだよ。どうしたんだ?」
「いや、お前相変わらずモテるだろう」
「そんなことか…まあ、アメリカで働いてたときは女性客から余計にチップを貰ったこともあったなあ」
「やっぱりな」