海で・・ 143
「あの、アヤさんはなぜ…」
「あぁ?ごめんね。美貴がメールしてきたから、つい、ね」
「ミキさんが…」
「うん、美貴も、一馬くんにはいい男になってもらいたいのよ」
「そうですか」
「そのためには、たくさん経験を積むことよ♪男はちょっと遊び好きなくらいがちょうどいい、って私は思うの。秀人は私が妊娠中に誰ともしてないって言うから…」
「あー、アヤさん!それ一馬に言うの!?」
秀人のダミ声を他所に、話しを進める。
「アヤさんは嫉妬とかしないんですか?」
「そりゃーするわよ。こんなこと言ってるけど、秀人が浮気したら、お腹の子は私生児になるはね。」
「それじゃあ…ミキさんは?」
「美貴が言っていることは、本心だと思うは。あの子は、例え自分が報われなくても、相手さえ幸せになってくれればいいってところがあるは。」
「自分が報われなくても…?」
「ええ、それだけ一馬くんを愛しているってことだと思うの。」
「そ、そんな・・」
「だから茜ちゃんとのことも、いい加減な気持ちでやって欲しくはないの…
美貴にしろ真帆ちゃんにしろ、相当な覚悟で一馬くんを見守っている筈よ…」
相当な覚悟…
僕もそんなに意識してはいなかったので、アヤさんがそう言ったことにドキッとした。
ミキさんも真帆も、僕を愛しているからこそ、木崎さんを抱いていいといっているのだ。
それを聞くと、生半可な気持ちでいてはダメだと思わされる。
「もちろん、これは一馬くんが男を上げるチャンスでもあるのよ」
「はい!」
「…妊娠さえしてなければ、私も一馬くんに…」
「うぐぅ…ぐぅ…」
秀人のくぐもった声が微かに聞こえた。
アヤさんが秀人を押し倒したのだろうと想像はついた。
秀人の喘ぎ声を聞いていると、僕の方が恥ずかしくなり、慌てて携帯を切った。
妊娠中にも関わらず、アヤさんはこんなにも積極的なのだから、秀人が女の子と遊ぶ暇など無いのがよく分かった。
「ふっ・・ザマァ〜」
僕は毒突きながらも、幸せそうな2人を垣間見れたことに、心が暖かくなった。
二人が相変わらずで、いい方向に進んでいることに安心しながらも、僕は僕で新たな決意をしなければならなかった。
ミキさんと真帆を愛し、そして木崎さんを愛する。
相手が誰であれ男として失格と言われるような態度ではいけない。
誰にでも変わらない愛情を見せれば…それは浮気とは言われないはず…
僕は勝手ながらそう考えていた。
木崎さんからメールが来た。
『明日はよろしくね』