海で・・ 141
ベッドに寝そべる。
「木崎さんと、か…」
僕は気づかなかったけど、彼女も、僕に気があったのだろうか。
まあ、女の子に好意を持たれるというのは悪い気はしない。
それが多ければ多いほど嬉しい。
「木崎さんが男子と…って話は聞いたことがないな」
…もしかしたら、木崎さんは『初めて』の可能性が高い。
(バージン・・?)
考えてみると、始めての子とヤッタことは無いかった。
ミキさんや森中先生、それに由佳里さんは経験豊富だったし、真帆とて秀人との後だった。
(大丈夫かな?・・僕・・)
不安が込上げてくる。
寝そべりながら、お気に入りのパンツを左右に広げ、それで顔を覆う。
いくら今まで経験を積んできたとはいえ、『木崎さんの始めての男』になる自信が持てなかった。
『自信持っていいのよ。一馬くんには一馬くんの魅力があるわ』
ミキさんはそう言ってくれた。
…しかし、心の面ではそうであっても、セックスはどうなんだろう。
余計なことは考えないほうがいいんだけど…
―そんな時、携帯が鳴る。
「誰だろう」
着信画面を見る。
『小島彩』
「アヤさん…」
悩んでいるときに、物凄くタイミングのいい人だった。
「もしもし・・」
本当は『アヤさん!!』と歓喜の声で叫びたかったけど、それをするには余りにも子供染みていると思い、僕は敢て低い声を出していた。
「おおおお!ぐぅ元気かぁーー!!」
携帯から飛び出す大声は、音が割れていた。
僕は慌てて耳からそれを離し、恐る恐るまた戻す。
「もしもし?・・アヤさん?」
「ブァ〜カァ!俺だよ俺!!」
「え?・・・・もしかして・・・秀人?」
「そうだぞー。一馬、元気かー?」
…ホントはアヤさんを期待してたんだけどなぁ。
でも、こいつは無二の親友。声を聞きたかったのはホントだ。
「今日本にいるのか?」
「ああ、親父さんが、アヤさんとの結婚を認めてくれたんだ」
「それはよかったな〜!!」
「ああ…なんか、短いようですごく長かった」
「そっか、じゃあ日本で暮らすんだ」
「んー、まあな。でも親父さんの実家だから、東京じゃなくて神戸なんだ」