海で・・ 140
「あぁ、まあ、ね」
適当に相づちして、僕は家の中に入った。
…まあ、何年か経ってれば性格や外見もだいぶ変わってるんだろうな。
今の僕には、さして興味のあることではなかった。
部屋に入って、カバンをベッドに置く。
「ふぅ」
ベッドに座って、しばらく見ていなかった携帯を見る―
「あれ、メールか」
その相手の名前と内容を見て、ドキッとした。
『木崎茜』
『鈴木くん、明日暇?よかったら、二人で遊びに行かない…?』
(「茜や初音が一馬くんを見る目もちょっと変わってたし…」)
真帆の言った言葉が甦る。
…これって、デートってことだよな?
(「たくさんの女の子と経験して、それで一馬くんが男を磨いてくれれば…」)
ミキさんの声が聞こえたような気がした。
そ、そうだよな…
ミキさんと真帆の為に、木崎さんとエッチするんだったら許されるよな…
思わず息をのむ。
木崎さんは中学3年間一緒だったクラスメートで真帆の親友。
濃茶色のショートカットが眩しいなかなかの美少女だ。
…ただし、野上さんに負けず劣らずのお調子者で、女子からの信頼は厚いものの男子とは喧嘩が多かった…そんな印象である。
僕自身は真帆のこともあり、そこそこいい関係を築けたと思っている。
そして、来春からも同じ高校に通うことになる。
木崎さんにメールを返す。
『特に用事はないよ。どこに行きたい?』
僕の心臓は高鳴っていた。
洋服箪笥から、一番かっこいいブランド物のパンツを手に取る。
…身に着けるもんは大切だもんな。
勉強机の奥に隠した、スキンの箱を探す。
…男としてのマナーだよな。
僕の頭の中には、つい今さっきまで交じり合っていたミキさんや真帆の姿は消え失せ、ベッドで悶える木崎さんの姿でいっぱいになっていた。
そこに、木崎さんからメール。
『場所は私に任せて!明日朝10時にXX駅北口ね♪真帆にはOKもらってます!』
へえ〜。
今の今まで「浮気はダメ!!」なんて言ってた真帆がねぇ。
それとも、木崎さんが真帆に聞いてきたのがついさっきだとか?
…まあ、それはいいだろう。